作品案内1「置き屋根と荒削りの家(山口自邸)」

この建物は、昭和10年頃の縫製工場で、地域特産の学生服を作っていた。手前の母屋を解体撤去して、既存と同じ間口で南に増築し、等高線に倣って細長い建物としたが、下屋根を繋げることによって、南北に細長い敷地に負けないだけのパースペクティブを得た。また、既存塀に焼き板を張ることによって、アプローチに立つ者の視点が突き抜ける効果を得ることも出来た。増築部分は1階が応接、2階が書斎。

再生工事というのは、もともとあった既存の建物の雰囲気を損なわないことが要点だが、屋根を葺き替えると、天井を見上げたときの雰囲気が台無しになる。そこで今回はこの長年の懸案だった屋根問題を、置き屋根で解決した。これは外観上の特徴にもなり、夏場の日射対策にもなった。安価な材料(節だらけの木材、モルタルにペンキ塗など)でのデザイン検討に苦労したが、綺麗な木よりも粗削りの方が古材には親しく、色漆喰よりもペンキ塗の方が古材には刺激的だとわかった。これを見た素人の友人はアメリカンだと評した。

2008年6月竣工、設計:山口晋作、施工:那須建築