作品案内2「キリスト教会の座敷再生(児島聖約キリスト教会旧礼拝堂の再生)」

この建物は、江戸初期から続く庄屋が明治初年に建てたものを、戦後にキリスト教会が譲り受けたものである。戦後から40年ほどの間、教会はこの二間続きの座敷を礼拝堂として使用していたが、10年ほど前に母屋を解体して新礼拝堂を新築した(ヴォーリズ建築事務所、設計監理)。新礼拝堂が完成した後は、教会学校や団欒の場として使われていたが、雨漏りを筆頭に使用に不便をきたす箇所が多数あり、今回の工事着手に至った。

設計のポイントは、床の間のある8帖間を象徴性の高い、より特別な空間とすることであった。それは、かつての庄屋屋敷のうち一番良い部屋であったということだけでなく、この部屋で教会の礼拝が40年間毎週行われてきたという記憶を繋いでいくことができるからである。

具体的な手立てとしては、

  1. 手前の10帖間の床を下げ、寄木床板・漆喰大壁などで、10帖間を洋風化して、8帖間との和洋の対比・新旧の対比を図る。
  2. 8帖間の床を半間幅で浮かせ、8帖間の特別性を強調する。
  3. 南東の角をオープンにして、庭との段階的な連続性を得、日本建築特有の軒下空間の豊かさを得る。

などである。

歴史のある建物がまた新たな力を得て、再生された。この地域では、この屋敷の庭で幼い頃遊んでいたという方もおり、今日でも毎日曜日に子供たちが集っている。地域に愛され、使われ続ける建物となることを願っている。

2008年4月竣工、楢村徹設計室(山口担当)、施工:片山住建

関連報道『山陽新聞、2008年4月12日』