クライアントに良い席を用意するという仕事

日頃は、自分本位で専門家にしか分からないようなことを書いているこのブログだけど、たまには、分かり易いこと書いてみる。

家を考える際に、何を大事にされていますか、とか、たまに聞かれるんだけど、居間ですね、一番長く過ごす居間が気持ちよくなるように考えています。と大体答えています。私は、何処かに連れて行ってくれる人でもなく、良いものを安く買ってくれる人でもなく、そうではなく、その人が過ごす際に、たとえば、写真は打ち合わせテーブルにクライアントが座った時に見える景色なんだけど、この写真のように「住まう人に良い席を用意する」という、そういう仕事だと自分では思っています。
余りそれ以上のものを求められても、つまりは、アレルギー体質が改善できる家がいい、夫婦円満になる家がいい、子育てが楽しくなる家がいい、などなど、そんなことを求められても、それは無理であって、安いコピーライターが書くような文句を鵜呑みにするのではなく、その部分はその方自身の人生の問題として引き受けてもらいたいし、また、自動車工場で造られたような均質・精密な家がいい、とかいわれても、トヨタホームでも苦労しているのに、なんならキャンピングカーで暮らせばどう?そういう身軽なのもいいですよね。実は私もそういうの好きなんです、という、逆提案をするような人物です。

ひとことで言えば、クライアントに良い席を用意する、という仕事ですが、敷地の状況と打ち合わせの中で得たクライアントの望む方向の、そのまた先にあるクライアント自身も未だ座ったことのないような、まだ見ぬ良い席を用意するという、そういう場を造っていく仕事だという、そんな感じでしょうか。「風景になる家」または「Classic-Line」というのをベースにしながら、今後も活動を続けていきます。みなさまどうぞよろしくお願いします。