林源十郎商店

 3月20日に、「林源十郎商店」という9つの商業施設が集合したお店がオープンする。場所は倉敷美観地区だ。
 その昔、5年ほど前になると思うけど、楢村さんの下で働いていた時に、奈良萬という旅館を核とした街区を再生して、一つの建物ではなく、複数の建物をつくって、街のにぎわいを求めて、住んでいる人達が、自分たちの街に誇りを持てるように、ということをコンセプトに、動いていたプロジェクトがあった。僕は勝手に銭湯なんかを造ってもみた。その後、紆余曲折して、大原家との関係でたびたび名前が出てくるので皆さんも知っているかもしれない、林源十郎さんという方の薬局「林薬品」(現エバルス)の敷地で複合施設をつくるという話が動き出したと聞いた(奈良萬の街区も数年後には完成します)。楢村さんにとっては、単体の建物ではなく、街そのものをいままでの、再生の手法で取り組める貴重な仕事だったので、ぜひ、成功させてほしいと願っていた。
 で、この間、楢村さんとは全く関係のない方向から、この林薬品でお店を出すので、内装のデザインをしてもらえないか、という話がやって来た。どうやら、全体の企画デザインと個別の内装は別になっているらしい。いま、この物件に、小さなカフェであるが、利益とかそういうものは度外視で、関わらせていただいている。倉敷にはない素敵なカフェになる予定だから、どうぞみなさま、行ってください。


 思えば、林源十郎さんは、僕が属しているキリスト教会の倉敷にある教会が以前、林源十郎さんのご自宅を譲って頂いて、広い日本家屋を教会兼宣教師館として使っていたことがあった。いまは、某病院の敷地となっているが、その昔の図面を、教団の事務室では今も保管していて、以前眺めたことがある。林源十郎さんは、建築関係者ならば知っている西村伊作の設計で有名な、日本キリスト教団倉敷教会の創設会員だ。私が毎日曜日通っている教会を、元の所有者から購入する際の立会・仲介もしてくださった方だ。街の為に、人のために、という志を持った源十郎さんの思いが、今を生きている僕たちにまで届いてることを実感している。