家電な住宅

日本の家電が、世界的に見れば、実は特異な存在だということを知っているでしょうか。それは、ひと言で言えば、一つのもので何でもやりたがる(やらせたがる)性格、と言った感じです。

例えば、エアコン。そもそもは空気調和機器という意味の機械ですが、冷温だけではなく、換気や空気清浄までできて、めんどくさがりの人のためにお掃除までやらせてしまっています。例えば、オーブンレンジ。電子レンジでは、パンが焼けないので、オーブンの機能を付け加えたものですが、パンを焼きたいだけなのに、数分待ってください、とこの間、機械から指示を受けました。二千円の中国製のオーブントースターを買った方が断然いいです。テレビ等のリモコン。ボタンがありすぎて、どれを押せばいいのか分かりません。冷蔵庫。冷やしてくれればいいものを、鮮度を保つための新機能が、最近ははやりみたいです。

まあ、こういった感じで、必ず複合的に機能を盛り込ませようとする性格が、日本の家電には、強いですね。それでもって、壊れるときは、その新機能みたいな部分が壊れるのであって、本来の機能は元気なのに修理に出す、なんて事態も起こりかねません。こういった傾向は、狭い日本の住宅事情を反映してのことかもしれませんが、ここまで徹底されると、なんかこう、もうちょっとシンプルにしませんかと、素人は思ってしまうのです。

さて、住宅です。今の住宅には、家電がそうであるように、多くのものが要求されています。断熱ガラス、防犯設備、床暖房、太陽光発電、高気密高断熱、掃除しやすい床材、節水型便器、省エネルギーな照明、地震でも壊れない家、台風が来ても雨漏りしない家、等々です。これらはある程度は要るものもありますが、これでは、あまりにも住まいに要求することが多いように感じます。

家というのは、一長一短・矛盾の総合体で、ドアをあっちに開けば、こっちには開かないようになるわけで、どこかで判断をしないと、住むことさえできない家になってしまいます。複雑にしすぎると、どこかで矛盾が起きるのです。その昔、窓に電動シャッターを付けたメーカー担当者が、火事の時、開くのかと聞かれ、顔が青くなっていたと、以前楢村さんから聞いたことがあります。住宅メーカーという日本独自の、特殊な業態が幅を利かせているからかもしれませんが、日本の住宅は、日本の家電のように、どうも「機能の詰め込み大会」みたいになっている現状があります。

機能の詰め込み大会の一等賞を目指さなくても、家本来のあるべき方向を考えて行くことが、良い家につながって行くように感じています。現代生活にはもちろん多くのものが必要ですが、はじめからそれらを家に求めるのではなく、住み始めてから家とともに一緒に作って行く、そのくらいの時間の流れで、これから住もうとする家に付いて、考えて行きたいものです。