お散歩サーベイ

最近よく散歩をする。妻が食事をつくる昼と夕方の時間に。子どもがいるとまともに調理できないので,みておいてくれ,と妻。いやもっと言えば,ご飯が食べたければ,子どもをよろしく,と妻。ザ,姉さん女房。そこで,日頃机に向かっている自分にも好都合なので,ココゾとばかりに,外へ繰り出すのです。散歩です。これがまた面白い。昼間は0歳児をベビーカーに載せて,半径三十メートルくらいを,ほんとに近所をくるくる歩く。夕方は4歳児と0歳児を連れて,もうちょっと遠い範囲を歩く。今住んでいるところは自分が生まれた家ではないので,基本情報が乏しいのです。まずは,どの路地がどこへつながっているのか,から始めて,道路の側溝の水はどっちからどっちへ流れているかとか,使わなくなった小字名とか,各住宅の建設年代や構造・構法とか,外観から浮かび上がる大体の間取りとか,住んでいる人の名前とか,何となく伺い知れる家族構成とか,空家,空き地など,いろいろと。ときには,玄関あたりに佇むおばあさんと話し込み,家に帰ると料理が冷たくなることもある。

真っ昼間に,いい年した男が,ベビーカーを押している姿はどう映るのだろうか。はじめは,おいらはかわいい我が子の散歩中なのだと,装っていたが,やっていることが怪しい。ギャップがありすぐる。じっくりと自分の家を覗かれたり,ときには,ずっとうつむいて,側溝の水ばかりを追っている。通り過ぎたかと思うとまた引き返して,二階の屋根あたりを見つめている。また怪しいあの人だ。載ってる子どもはヌイグルミなのか,それとも,もしかすると,誘拐された子か!

今日は前から気になっていた,近くの溜め池の水の行き先を突き止めた。これがおもしろい。あるタダッピロイ空き地を取り囲むように,溜め池の水が流れている。途中では,別の水路と立体交差しながら,流れる。うー,かっこいい!後から造った方が下。空き地が終わるところで,水路もくるりと方向転換をして,まっすぐ海へ向かう。その空き地が大きくて,学校の運動場くらいの空き地。今では部分的に駐車場になったり,公の施設が建ったりしているが,その昔いかにも,稲作をしていたような田んぼの跡がミエミエの空き地。溜め池と田んぼと水路は仲良し三点セットなのだ。その最後の出口には,コワい人の家があるという噂を,義父から聞いていたので,なかなか行けなかった。でも,大丈夫,二十歳の頃,トビコミで三井倶楽部を見学させてもらった度胸がある,汚い服で。愛知の田舎から来たんです,またとないチャンスなんです。勇気を出して,その人の家の敷地の端を勝手に歩いて,平静を装い,水路が方向転換するポイントまで行ってきた。行ったとたん,ワンワン!!と吠えられて,びくびくして退散した。でも,いいのだ,曲がる場所とその造りが確認できた。

食事を済ませると,机に向かい,さっきみてきた調査結果を何も書いていない白い紙に書き込む。頭の中にある地図をアウトプットしながら,日々精度を上げていくのです。この地図を完成させるまで,グーグルマップはおろか,本当の地図は見ないようにしようと自らルールをつくって,取り組んでいる。その地図は日を追う毎に精度を高め,範囲を広げ,バージョン3くらいまで到達している。『味野本村,お散歩案内』なんて本ができそうだ。

お散歩サーベイ,流行ってます。