拝啓 哲学先生、お元気でしょうか

本を読む暇などないのに、読んでしまう。10年前から変わっていないこの傾向は、二人の友人によって助長された。一人は竹田くんで、今ではこのようなサイトを開いている。

http://www.great-saying.com/

彼は、同級生で一緒にいた2年間ずっと行動を共にし、いいことも悪いこともしてきた。悪いこととは、学校批判・教師批判をしている建築家の雑誌記事をコピーして、これぞとおもう教師たちの部屋のドアに貼付けたことだ。しかも、夜中に。数日後犯人が分かったときには、教師はもちろん先輩からもこっぴどく叱られ、ずいぶん反省をした。その後、数々の勉強会や建築見学の旅行を行い、一緒にヨーロッパにまで見に行った。建築見学にヨーロッパまでいくので、授業を休ませてほしいと、張り紙をした教師にお願いに行くと、快諾してくださり、どうせいくならきちんと見てこい、帰ったら報告しろと言われた。いいところもあるなと二人で話していた。竹田くんがこのようなサイトを持っていることは、彼らしくてすばらしいし、僕としては少々誇らしくもある。メルマガも発行しているので、気に入った方は読者になってください。

さて、もう一人は、野前くんだ。確か一才年上だったと思うが、一才年下のような気もしてきた、定かではない。彼は建築の勉強はあんまり熱心にしていなかったが、哲学、社会学など一般教養の面において深い好奇心を持って勉強していた。僕がいた研究室は「工学部唯一の文系」と言われることもあった、建築史の研究室だが、同時に僕は工学部神学科といわれた「聖書研究会」という同好会に通い、日曜日には教会に行っていた。この聖書研究会からは、牧師が4名ほど出ており、国のお金で勉強しておきながら、何たることか、との批判も受けつつ(国立なので)、部長などもやっていた。そんなわけだから、哲学を知らないわけではなかったが、教科書程度にしか知らず、まともに向かい合ったことがなかった。細かいことは未だに分からないが、そのときよくわかったことは、今は当たり前のことが当時はとてつもなく画期的な考え方で、哲学者たちの身を削るような思考の積み重ねによって、今日の世界が形作られているということ。

また、同時に二人して楽しんでいたのが、インターネット。当時はグーグルがまだ出ていなくて、ヤフーぐらいしか検索サイトがなかったが、表面的な情報はすぐに分かるけど、意味のあることはこの世界(ネット)にはないな、でも5年くらい経てばずいぶん変わるかな、などと話していた。今では、グーグルで、世界中の航空写真が見れるし、ブックサーチでは大学図書館にある書籍がPDF化されて無償で読める。もともとアメリカ軍の中から出てきたこのインターネットの考え方は、権力を集中させるのではなく、無限に分散させて、無償で情報を共有していこう、というもの。ウィキペディアなんかは、すでに書籍化された百科事典の何倍もの量を備えている。

昨日のオバマ大統領の就任式に集まったのは、200万人とも言われているが、その映像を見ながら、僕はインターネットが目に見えているようだと思った。オバマ新大統領を見るにはネット上で当然ながら、生中継がされているのに、大勢の群衆が集団で、大スクリーンを見ている光景は、大勢の群衆が個人のパソコンモニタを覗いて、オバマさんを見ているかのように映ったのだ。ちなみに、群衆たちは無償のチケットで入場したと聞いた。これもインターネット的だ。野前くんならパソコンモニタで見ていたでしょう。野前くん、いや哲学先生、お元気でしょうか。僕はあなたのおかげでずいぶんと視野が広がりました。またお会いしましょう。