薪ストーブの教えてくれたもの

私の家は,水は井戸水を汲み,暖は薪ストーブでとる、というのが設計時の設定でした。
井戸水の使用は,植木の水やりや子供のプール、庭仕事時の手洗い程度が,
実態ですが、それでも、井戸の与えるメッセージは大きいです。
そして、薪ストーブ。

まず、木は燃えると灰になるということ。
バーベキューでも焚き火でも燃やすと炭になりますが,
薪ストーブでは、ティッシュを燃やしたときのように,
さらさらの灰になります。完全燃焼ってやつです。
灰は,芸術や宗教において象徴的に使われることがありますが,
木から灰になる過程を見ていると,たとえば、聖書にでてくる
「灰を被る」という行為の意味するところがより豊かに伝ってきます。

次に、木の堅さを教えてくれます。薪として燃える前の段階,
一本の木からチェーンソーで切り,斧で割るという行為の中で,
杉,檜、松など主要建材の堅さの違いが手に感じて分かりますし,
燃やしていると,燃えるスピードと木の堅さが正直に比例しているのです。
カスカスの杉はどんどん燃えるけど,松はゆっくりゆっくり燃えます。
これは分かり易かった。

あとは、茶室の炉の話。
たしか、茶道は,発生時では上流階級の贅沢の一つだったと
覚えていますが,地位の高い人がわざわざ農家の囲炉裏のようなものを
狭い茶室の中につくったのが,面白く感じます。
汚らしくてもこぎれいに造った茶室、市中の山居をめざした、
わびさびを楽しむ茶室。その茶室に、
火があるとないとではおそらくその雰囲気は違って感じられるでしょう。
火があるとそれはもう,民衆の生活を感じさせます。
させますから、逆手に取って,抹茶を飲むときには,
かならず、炉を切らせて,炭火を焚いて,湯を沸かします。
上流階級の人たちのママゴトだったのかも知れません。
普段は自分でご飯を炊くことはなかったでしょうに。

灰,木の堅さ,茶室、が収穫でした。