反強迫観念、反プラスティック同盟

最近知ったことだが、日本では風邪薬がバカ売れするが、欧州ではそうでもないそうで、それは、風邪というのは五日なり一週間なりある一定期間を過ぎると次第に治まり、体温も日常生活に支障がない程度で推移するものだという認識で皆が過ごしているからで、発熱したりだるくなったりするのは身体の方が正常な反応をしているからであり、その正常な反応を身体に任せて自律的に反応させてあげるのが選択すべき道であり、そうではなく、何らかの症状が出てきた結果だけに意識が集中し、その結果を治めるために薬剤に頼るというのは、ナンセンスだというのである。下痢をしたからといって下痢止めの薬を飲むのも同じで、身体が不要なものだと判断して排出しているのだから思う存分排出させてあげればいいのであり、身体がぐったりして白眼を剥いて動かなくなったりしているなら、また別だが、その状況で薬を飲むというのは、クルマを運転していてゆったりしたいからという理由でシートを奥までズラして座るのと同様で、いざという時にしっかりとハンドルが握れずそれだけではなくブレーキを奥まで踏めないのと同じであり、そんな薬の運用をしていると、いつか必ず事故に遭ってしまうということであり、いやそれ以上に、確実に身体は弱くなり身体の中に不要なものが蓄積して、その生活を数年続けて行くと、違う身体になってしまうというそんなことにも成り兼ねないという生活を多くの現代日本人は過ごしているのである。

「〜でなければならない」という感覚を過剰に持つことを、大雑把で申し訳ないが、強迫観念と言わせてもらうが、結果として出てきた事象の方に反応して、その事柄を「正常」な状態に戻すために人工的にその現象をコントロールしようとする意志を過剰に持つことを、強迫観念と呼んでみるが、原因はともかく床の木がササクレ立っていたり節があるというのは「正常」な状態ではないので、それを一生感じたくないという大胆な行動に出るのも強迫観念であり、住宅材料で言えば、その強迫観念を一手に引き受ける総合商社が石油から精製され形成される樹脂製品でありプラスティック製品である。こういうプラスティック製品の用い方に対して私は断固反対の意志を示す「反プラスティック同盟」を組織した。

ずっと「正常」がいい、というのが、大壁ビニルクロスの家であり、その方向性で「安く大きく」を追求すれば、近所に建設中の大東建託のアパートになるのであり、それが不満なら、なんとかホームの住宅になり、それが不満ならナントカ工務店の注文住宅になるのであるが、一見、中身は向上しているように見えるものの、私から見れば、すべては同列であり、その大元は、あるべき状態よ、ずっと永遠なれ!という「強迫観念」から導かれるのであり、汚れてもイケナイし、凹んでもイケナイ、そのくせ、機能しなくなったら直してあげないで、捨ててしまうというのが、「強迫観念」を軸にした行動規範である。つまりは、クロス張り替えである。

外車に乗るのは、お金が掛かるというのは、私にいわせれば、それはまるで、古民家再生工事をしたことがない工務店が、「そりゃあ、そんな改造したら、新築の二倍かかりますわあ。止めた方がええですよ!」と工事をしたことがないのに口走って仕舞うのと相似形であり、走行性能も安全性も数段上の欧州の大衆向けコンパクトカー(例えば、VWポロやシトロエンC3)を買わないのは、超もったいない話だが、欧州で普通に走っているクルマが日本で走らないわけがないのであり、いや、走るのだが、実際に日本の若い婦人層が求めているのは、目に見える収納量であったり、内装の豪華さであったり、目先の値段の安さであったりするわけだから、いくら日本車が10年遅れているとか、燃費は大差ないとか、安全性が低いとか、80キロ以上出すと不安定になると言っても、そもそもそんなことは求めていなくて、クルマならクルマとしての基本性能は求めていなくて、住まいなら住まいとしての基本性能には無頓着で論点がズレているのが問題で、論点がズレた上に、常に「正常」を強く求める意志が働くから、さらにタチが悪くなるのである。つまりは、住む前から掃除のやり方、日々のメンテナンスのやり方などに異常に興味を示すことであり、そのくせ、たいていのばあい、住み始めた後は掃除やメンテは余りしないのである。お笑いである。

10年くらい前からか、マスコミの蔑称として「マスゴミ」(マスコミはゴミだという意味をもっている)という言葉が世間を賑わせているが、最近では「ダマスゴミ」(騙す・マスゴミ)という蔑称も登場しているようで、国民を騙すことを主目的とした機関として戦後に新聞・テレビ網が整えられたことをこの名前は意味していて、団塊世代以上の新聞とテレビだけを情報源にしている一定層は別として、そうではない人たちは、戦勝国が行なった日本改造作戦の意図を大小は別として理解しており、このダマスゴミが「正常」をつくる装置であるのは、言わずもがなだが、この文章を呼んでいるあなたも、未だに牛乳が身体に良いと思っていたり、妊娠の可能性が高いから風疹ワクチンを打たないといけないと真面目に考えているかもしれないが、戦勝国の若頭であるアメリカ合衆国においての現時点での製造業というのが、住宅産業だけになっているのが象徴的であるように、その感覚はもはや「正常」ではなく異常であり、彼ら戦勝国の言いなりで国の行く道を決めてしまうと、日本からモノを作る感覚がなくなり、感覚が無くなるというのは、触れてもそれが何のか感じないことを意味しており、プラスティック製の疑似木材を見て、本物かニセモノかが分からなくなっている現代日本人の大多数の感覚というのは、私に言わせれば、異常な清潔感覚と強迫観念が造りだした危機的状況なのである。

マスゴミに対して文句を言うのではなく、ダマスゴミ自体も戦勝国のパシリであると言う理解をした上で311以降の日本を生きなければならず、311の福一水素爆発が一回ではなく三回の爆発音が聞こえていたり、911のツインタワーがとてもキレイに解体爆破されたことなども思い出しながら、しかも、土と木に親しみながら、ワンパクでもいい、逞しく育って欲しい、と反プラスティック同盟の会長であり、二児の父親である私などは思うのである。

(お知らせ)このブログは、建築ブログでありますが、同時並行的に同じような思想を持つものを扱い、産業革命から紐解き、どのようにすれば日本らしい住まいを構築できるのかを徒然と綴った建築随想です。なお、次回以降は、他媒体に移行しますので、「はてな」での掲載は、今回が最後となります。はてなさん、ありがとうございます。次回は9月1日に更新の予定です。