「陽気な家」の誕生

このままでは万年佳作ではないかとの危機感を持ちつつ、独立以来数年過ごしていたが、人前に出れば、優等生ぶって自分を誤摩化していく行き方も限界であり、道化師のように陽気に過ごすのが健康的かも、うんそうかも、などと思いつつ目の前の仕事に当たってきた。そういえば小さい頃、図画工作では常時4でマグレで5であったし、習字も佳作、今の時期の体育で走らされるマラソンも、きまって二位か三位と、ぜったい一位にはなれず、綱澤務と平賀圭には勝てない人生なら、いっそ微笑みながら過ごしてしまえと、大学で出会った竹田一英には勝てないけれども、佳作は佳作なりに生きる道はあるさというわけで今回の「陽気な家」は登場相成った。

いままでの外観の家のことを、クラシックライン(Classic-Line)と呼ぶなら、こちらはハッピーライン(Happy-Line)とでも呼ぶべきもので、日本語で書けば「風景になる家」と「陽気な家」となる。「風景になる家」というのが、本来の私の経歴からすると自然な流れで、多くの人に受け入れられ易いものだけど、ド素人からすると、「なんとか工務店」の家とは見分けがつかないんです。ヤマグチさんの家のどこがいいのか、教えてください!と住まいをブランド力や数値で測らないと気が済まない人種から聞かれそうな勢いなので、ほれここが違うんだよ、と口で言う代わりに先に作ってしまったというわけである。というわけだから、これが完成して現物を見ても、同じような質問をするのはもうダメであり、ご自分で感じてご判断ください、美味しい饅頭は美味しいと感じますか、なんならお茶でもお持ちしましょうか、ということになる。

で、この家がどこにあるのかと言うと、下の写真の道向かいにあるのであり、私の事務所に座りながら、さあ、お宅は「ハッピーな方?それともクラシック?」「アッチ?それともココ?」などと、指を指しながら、そして、微笑みながら話せばもう時間短縮で細かい説明は要らなくなるのであり、かねてから作っていなかった模型という代物を益々作らなくなり(笑)、ヤマグチ建築デザインにもやっとのことで、一つの仕組みが出来上がり、大量生産の時代がやってくるのである(大量生産はウソだw)。
もちろん以前から、ハッピーラインの色香はそこここに漂っていたのだが、ここまで前面に出すのは、もうこれ、新しい文明開化のようであり、擬洋風建築を微笑みながら作っていた明治の棟梁の心意気に通じるものがあるのである。とはいうものの、図画工作が「4」の男が作るもんだから「陽気な家一号」でさえ佳作には変わりなく、マラソンのごとき仕事人生は今後も続き、地方都市での佳作建築家には今後も貧乏暇なしの日々が待っている。
このままこの住宅は仕上げを重ねていって、ますます、色艶を増した建築に出来上がるが、これが、三月上旬には完成し、ここのブログではなく葉書での案内で、初めての作品展です、ご都合よろしければ来てください、とお近付きの諸兄諸姉には、案内がされ、運が良ければお会いできるという運びになる。ハッピーである。