年初にあたって

美の壷」の進行役が,谷啓さんから、草刈正雄さんにかわっていた。以前,倉敷に「蔵」の取材できていたプロデューサーが、最近谷啓さんのカンペ率が上がっていて,どうにも困るんです,とこぼしていたっけ。谷啓さんの場合は息の長い芸歴のなかで,自らの生の移り変わりを人々にさらしながら,美しく老いていってるように見えます。
あけましておめでとうございます。遅すぎですね。年末年始と日頃会わない人とあったり,中学の同窓会もしたりと、ずいぶん濃い時間を過ごしていました。Twitterを始めると,ブログ更新が滞るという現象はよくあるようですが,僕もそうでして,この辺りは整えないといけない課題です。将来的には本丸である(おいおい、おおげさ)ホームページも備えましょう。

正月休みに子供用のハンガーを新しく購入しました。以前と同じものを同じ店で買ったつもりでしたが,値段は同じなものの、かなりの改良が施こされていて,感心しました。これは物干竿に単に引っ掛けるのではなく,大きな洗濯ばさみの要領でバネの力で挟むタイプなのですが,力を加える支点に指がなじむような形状になっていたり,肩の部分にでこぼこができて,ずり落ちにくくなっていたり、三角の底辺あたりに、ズボン類を止めておくことができるクリップがついていたりと,工夫たくさんでした。しかし、値段は同じです。最初の型を作る段階で,ニューバージョンを作ってあげればいいだけで,作って売る業務は同じ労力です。値段は同じですが、変わったのはデザインです。
値段を多く払えば,いいものが買える。あるいは、たくさん払ったのだから,いいものに違いない,うん、ぜったい!、と多くの人は思うのですが,特に家に関しては,値段が高いことがそのままいい家にはつながりません。いい設備を入れたり,防犯や断熱ダラスにしたりと、建築の本体に関わらないところを売りにするところもありますが,大事なところは、モノであれコトであれ,企画でありデザインですから、先の子供用ハンガーがよくなったのと同様に,デザインが要です。
いま改めて,「家なんか,ただ住めればいい」と,改造も含めた(むしろ改造が本流かと最近思っています)「家をツクルこと」、をあきらめている方々に、どうにかして「デザインすること」の大切さ、この良さを伝えたいと思っています。これは今年一年の目標というよりも生涯のテーマです。
とりあえずは,与えられている目の前の仕事に感謝して,現場と図面を丁寧に、一歩ずつすすめます。

年末年始に本を買いあさりました。本のヤケ食い、と呼んでいる行為ですが,ケネス・フランプトン『テクトニック・カルチャー―19-20世紀建築の構法の詩学』購入を皮切りに,村野藤吾の仕事をまとめた『村野藤吾建築案内』を買いました。一般では,網野善彦さんの岩波新書『日本社会の歴史』など日本についての理解を深める本を買っています。これらは、小さい頃から親しんでいる近所の書店(片岡書店)で買うことにしています。わずかですが,「地域のために」を意識して,今年も本とつきあいます。

皆様も,どうぞよろしくお願いします。