土間の話

土間というと現代の家では,玄関の靴を脱ぐところ,というイメージがあります。その場合の土間は靴が散らばっていて見た目にもあんまりいい場所ではありません。だいたい一坪くらいで狭くて、あんまり心地いいものではありません。『現代住宅の貧しいもの百科』(←僕の頭の中にあります)の筆頭に位置します。じゃあ、広い玄関にしようと思っても,お金がかかる割に用途がなく,見栄を張ってるだけのように感じます。

しかし、昔の家の土間はとても広く,3分の一から半分の面積を占めるものでした。これは以前も書きましたが,火と水がポイントなんです。水道が引かれてなくて,井戸水を使っていたこと。また、火を使うのが,北の地方では囲炉裏で、南に行くとかまどだったという理由によります。

また、これに加えて,大事なことは,土間が仕事場だったということです。これは生活スタイルにも関係していますが,昔の人は今日ほど勤め人が多くなくて,家で何かしら仕事をしていた人が多いのでした。その際に仕事場となるのが,たいてい土間なんです。外でする仕事以外の作業は,だいたいが土間か,軒の下で行うものなんです。勤め人は家では仕事しないので,今の家は土間が少なくなるというのは一つの真理だと勝手に思っています。

僕の家の場合は、床をつくる予算もないと同時に,訪問者に気軽に入ってほしかったのと,ネコの額のような狭い土間がいやなので、どーんと広い土間にしたのでした。土間はヒンヤリして,気持ちいいですね、と僕の家を夏に訪問した人が言っていましたが,夏だけでなく冬はもっとヒンヤリしています(笑)。

大昔の家は地面を深く掘って,屋根兼外壁は植物と土で覆っていました。地面を深く掘っていたのは意味があって,季節による地面温度の変化が少ないということです。今度は地面を掘ってみようと思います。