雑誌掲載;キリスト教業界誌「ミニストリー第17号 教会建築」

キリスト新聞社の季刊誌「ミニストリー第17号」(2013年春号)が教会建築特集を組み、楢村設計時代に担当した「児島聖約キリスト教会 旧礼拝堂」が掲載されました。雑誌のサイトはこちらです。

この建物は右の欄にもリンクがありますが、明治初めに建てられた古くからの庄屋屋敷の「お座敷」を、戦後にスウェーデンの宣教師が買い取り、1995年までヴォーリズ事務所設計の新しい礼拝堂が出来るまでの約40年間を礼拝堂として使って来たもので、それを再生したことの報告が3ページに亘ってなされています。内容としては、建築についてはすでに報告した通りでこのブログで書いた域を超えるものではありませんが、それに追加して主任牧師の安達忠先生が牧師としてのコメントを寄せていて業界誌として読み手に優しいかたちとなっています。




このキリスト教会は、戦後期に中央ではなく地方都市岡山を拠点に宣教活動を開始した教団ですが、1960年代に2つの新築教会(岡山市玉野市)と児島市(現倉敷市児島)の庄屋屋敷の改造を宣教師繋がりでヴォーリズ事務所にしていただき、施工は倉敷の藤木工務店で行なっています。この他未確認ですが、玉野市岡山市に新築の宣教師住宅を、また倉敷市の林源十郎邸を改装した宣教師住宅兼教会をヴォーリズ設計藤木工務店施工で行なっています。このうち、玉野市の宣教師住宅は現存していて、4年程前に私自身の設計で再生され現在も住宅として使い続けられています。岡山市玉野市の教会堂は現存していて今も礼拝に使われており、児島の改造物件は上述の通り解体撤去され現存しません。また、岡山市倉敷市の宣教師住宅もすでに解体撤去されていて現存しません。


この特集での注目すべきは、長年教会建築に関わってこられ、私が属している教会の設計者でもある石田忠範さんが4ページに亘って、教会建築を志す教会のために実務的指南をしているところで、これから建物の改造新築等を考えている教会にとっては良い示唆を与えるものとなっています。私も読みましたが、石田さんの経験豊富な実績に裏付けされた適切なアドバイスは、短い紙面の中でも輝くものがありました。昨年秋に岡山で講演をしていただきましたが、重なるところもあり興味深く読んだものでした。興味のある方はお手に取ってご覧下さい。



(上記2枚はヴォーリズ設計の部分、1995年)
今後この系統の特集を組むとすれば、自己所有ではなく賃貸物件として教会堂を構えている教会のための実際的問題を扱うものや、礼拝堂という主要な部屋以外の周辺的な部屋や建築に付随する家具や看板・什器などを取り上げたもの、今後増えるであろう改造についての多数の報告、また日本における近年の現代教会建築の良質な事例の報告を重ねていくことが必要かと思いました。
歴史的理論的報告は、長久清先生の過去の著作『教会と教会堂』(2000年)や加藤常昭先生らが著した『教会建築』(1985年)などでほぼすべてが書かれていますので、ここから新しく重ねるとすれば、次の世代である私などが卒業論文で調べたことを下敷きに、もう少し礼拝学も勉強しつつ、150年前のイギリスに起こったゴシックリバイバルの時代を再考察して、教会堂としての現代的エッセンスが分かるものを引き出して、報告すべきかと自分では考えています。
150年前などと書くと、ずいぶん昔の話しとお思いかと思いますが、産業革命以後の世界というのは、地域の文化的民族的慣習的な誤差はあるにせよ、大体同じような感覚で世の中が動いており、この頃の大変化の中での当時の人たちの葛藤を追うことが、即現代に生かせるものになるのだと、推測しており、たぶんこれは当っていると思っています。いつのことやら分かりませが、自分自身が建築に興味を持つキッカケとなったものですので、ライフワークとして、取り組んでいきます。
久しぶりに教会建築に関わる業界誌での露出となりました。お声をかけていただいた編集長の松谷信司様、また友人の永野卓様、ありがとうございました。